このページのキーワード: 生物多様性, 相互関係, 生態系保全, 自然破壊, 移入種と自生種, 沈黙の春

生物多様性とは

自然の恵みは生物多様性から

 私たち人間を含むあらゆる生物は、異なる環境に適して分布する様々な種が、お互いに密接な関係を保ちながら、生物群集として長い年月を経て進化をしてきました。 その結果、生物種ごとに環境に適した独自性を持ち、また種間でも地域ごとに遺伝子が異なるという変異を持つようになりました。 これが生物の多様性です。

 したがってその群集を構成していた多数の種の中のひとつの種が欠けてもその地域の生物の多様性が失われ、生態系に影響が及びます。 

 多様性には、景観の多様性、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性など様々な段階がありますが、これらのすべての段階の多様性を備えた自然こそが、人間を含む生物の命の源泉なのです。 したがってすべての生物が健全にその種を存続させて行くためには、生態系の保全と生物多様性の保全が重要だといえるわけです。

とどまることを知らぬ自然破壊

 私たちの生活環境は、近年大きく変化しました。 都市部は言うまでもなく、地方の田園地帯でさえ自然破壊が急速に進んでいます。 都市では大量の住宅供給のための宅地開発や、それに伴う道路建設、農村では減反政策や農地や山林の宅地転用などによる休耕地、空閑地が増加しています。 年を経るごとに原野は削られ大きな改変が加えられ、残された自生の植物や動物は、生き残ってゆくことが次第に困難になっています。

 多摩丘陵に例をとると、多摩ニュータウンなどの造成工事の結果、キンラン、ギンラン、ニリンソウ、ムラサキ、タマノカンアオイ、サギソウ、ヒトリシズカ、フタリシズカなどがその自生地を奪われ、コナラ、アカマツ、サワラ、ブナ、クヌギ、ヒノキ、スギなどが次々となくなり、針葉樹林、落葉樹林が姿を消しつつあります。またその下草であるゼンマイ、コモチシダ、ホラシノブ、ウラジロ、クマワラビ、カニクサ、ワラビ、センリョウなどが被害を受けています。 自動車の排気ガスに弱い蘚苔類は沿線と道路脇では姿を消しつつあります。(「帰化植物100種」 山岡 文彦著より)

 私たちは郊外にゆくと、まだ野鳥やトカゲやコウモリ、カエル、昆虫その他の動物を見ることができますが、しかしよく観察すると。それらはかってそこにいた種とは異なった種であることに気がつきます。 特にここ数十年は地域でいくつもの種が絶滅すると共に、多くの野生生物が姿を消しつつあります。

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生物多様性を脅かすもの

 生物多様性を脅かしているものには、どんなものがあるのでしょうか。 主なものをいくつか列挙してみましょう。

 1.開発による生息環境の喪失や破壊
 2.大気、土壌、水質汚染による生息環境の悪化
 3.乱獲
 4.移入種* による影響

 *移入種: 国内外を問わず、本来の自然分布範囲外の地域から移動・移入してきた生物のこと。 外来種という言い方もありますが、外来種と言うと外国から渡来したものと受け取られがちなので、ここでは移入種という用語を使用します。

 *自生種: その土地に自然に発生して生活し続けている生物のこと。 これも在来種という言い方もありますが、在来種の中に地域固有種がある場合もあるので、ここでは自生種という用語を使用します。



 これらの中で私たちのガーデニングにも関係の深い移入種と生物多様性の関係について、もう少し詳しく見てみましょう。


  地域の生物多様性を脅かす移入種 

 移入種は次のようなかたちで地域の生物多様性を脅かしています。

 1.移入種が増殖すると、自生種の生息地が失われ、自生種の生育ができなくなり、その種とその種に依存していた種の絶滅につながります。

 2.移入種と自生種間の浸透性交雑*により、遺伝子撹乱が起こり、種の絶滅につながります。

     *浸透性交雑:遺伝的に分化した分類群が二次的に接触して交雑し,遺伝的交流を行う現象
 
 3.上記1.2は意図的な移入による影響ですが、ペットやコレクションなどへの移入種の利用の場合にも、それらの移入種が放棄されたり、逸出すると同様の結果を生みます。

 時々「河川敷に数万本のコスモスを咲かせる事に成功した。」というようなニュースが地域環境を改善したというニュアンスで伝えられることがありますが、本来このような場所には、春はジシバリやヘビイチゴ、秋にはアキノキリンソウやカワラナデシコ、ススキなどが生育しており、それらの植物と共生していたチョウやハチがいたはずです。  秋の一時期を彩る移入種のコスモスのために、それらの自生種の動植物はその生息地を奪われ、その地域の生物の多様性が失われると同時に、地域の生態系の輪が断ち切られてしまうことに行政も市民も気がつく必要があります。

  今盛んにつくられている「学校ビオトープ」でも自生種に対する認識の欠如から、移入種が安易に持ち込まれることにより、地域自生種の消滅や移入種の拡散源にすらなっている実情が報告されています。(阪神ビオトープフォーラム1999) ビオトープづくりは、生態系の専門家の関与による正しい計画と管理がなければ、教育効果も上げ得ないでしょうし、地域生態系にとってマイナスの効果も生みかねません。

 最近の事例では関東では栃木県鬼怒川中流域でのみ生息するシルビアシジミが砂防のために植えられた外来植物(シナダレスズメガヤ)の影響でシルビアシジミの食草であるミヤコグサなどが生息地を奪われたため、絶滅の危機にさらされています。(日本経済新聞2005.05.02付け朝刊)

 

移入種に対する国、造園業界の取り組み

 環境省では、2002年8月に「移入種への対応方針」を発表、2003年11月には生態系保護のために「移入種対策」の最終報告をまとめましたが、その対象は動物にとどまっており、植物に対しては殆ど考慮されていませんでした。

 その後2004年6月にようやく「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(通称「外来生物法」または「特定外来生物被害防止法」)が制定されました。

 造園業界では、2003年5月の日本造園学会でようやく移入種問題が取り上げられましたが、そこでも議論の対象は動物に限られていて、造園の主材料である植物について移入種問題がまだ本格的に論議されるには到っていないようです。

 緑化工学会では、緑化事業の中で生物多様性を保全するための考え方として以下の提言をしています。
生物多様性保全のための緑化植物の取り扱い方に関する提

 また日本生態学会では、「外来種ハンドブック」を作成し,移入種問題を喚起しています。

害虫も絶滅させてはならないか? 

 生物の多様性を論議するときによく話題になるのが、「害虫も絶滅させてはならないのか」ということです。
では害虫とは何でしょうか。 人と害虫の歴史を振り返ると、害虫とは一次産業(農業)がその生産地の生産性を高めようとして生産地の生物の多様性を著しく低下させたために生じた不幸な産物で、本来害虫というものは存在せず、人間が誤った考えから名づけたものに過ぎません。 
 
 害虫を駆除するための農薬は「薬剤耐性型」の害虫を出現させ、それがさらに強力な駆除農薬の開発につながるという「いたちごっこ」となっています。 農薬の使用が田園の多様性を崩壊させるとともに、生物濃縮によって農薬が集積され、食物連鎖の上位にいるコウノトリ、トキなどの種の絶滅を招いたわけです。

 したがって種の多様性が確保されれば、害虫はおのずから害虫でなくなり、害虫保護という問題もなくなるわけです。 農薬による田園の多様性の消滅について、警鐘を鳴らした書籍としてレイチェル・カーソンの「沈黙の春 - Silent Spring」があります。

 

生物多様性関連情報リンク

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 地域自生種を植えよう

私たちは無用な開発行為を止め、やむをえぬ開発のため自然に手を加えるときには、可能な限り原自然の保全や復元に配慮する必要があります。


 例えば道路の砂防工事や街路樹に利用する植物を、地域自生の個体由来のものにすることを考えてみる必要があるのではないでしょうか。 

 私たちは餌や、隠れ場所、そして水を用意してやることによって、野鳥などの野生動物を私たちの庭に呼び寄せることができます。 またあなたの地域に自生している個体由来の植物を育てることによって、野生生物の生息環境をつくり、彼らをまもり、かつてその地域に存在した重要な動植物の相互関係を再構築できます。 地域の生態系や生物多様性を保全するために、あなたの庭に地域自生の個体由来の植物を植えましょう。 これがエコガーデニングの大きなポイントです。

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 次は自生植物と「エコガーデニング」との関係をさらに詳しく説明します。

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